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はたらく投資家

サラリーマン生活に疲れきっている投資家が奮闘する日記(ポロリはないよ)

鉄の骨

ブックレビュー

池井戸潤の小説です。

主人公は大学の建築学科を卒業し、マンションの工事の現場で働いている(監督役)4年目社員です。

冒頭の場面が終わると日々の仕事に懸命に取り組む主人公のもとへ、突然の異動が告げられます。主人公の異動先は業務課と呼ばれているところです。業務課というのは談合課とも揶揄される課であり、公共団体から発注される工事の見積もりや調整、入札を担当する部署です。

建設会社には大きく分けて土木と建築2種類の業務があります。土木と建築と呼ばれるものの違いは、地面から下か上かで区切られています。
土木というのは道路整備やトンネル工事、橋梁の工事など社会のインフラとなる工事を指します。
一方建築というのは、マンションやビル、戸建て住宅等、いわゆる建物の工事のことを指します。
土木は社会インフラ整備としての性格が強く、注文のほとんどは地方公共団体など公から出されます。一方建築は民間からの注文が主だったものです。

業務課は土木工事を担当する部署であり、公共工事の受注は入札方式といった方式がとられます。入札方式とは役所が事前に入札額の幅(予定価格と最低落札価格)を決め、予定価格と最低落札価格の間で最も低い入札価格を提示した企業に工事を発注するという方式です。
この方式では入札を行う企業同士で話し合い(談合)を行うことにより、誰がどの価格で入札するかを決めることができます。落札する企業が入札価格を予定価格より少し低めに設定し、その他の企業がそれを上回る入札価格を設定することにより、落札する企業の利益を最大化することができるというわけです。
この方式では一つの公共工事をめぐる受注においては落札できない企業が出てきます。しかし、何度も談合に参加することにより、公共工事の受注できなかった企業もいずれは一定の利益を上乗せした落札価格で公共工事を受注する番が回ってきます。
結果として、談合に参加しないで完全なる競争のもと入札するよりも、談合に参加することにより、工事を受注する企業の利益が増えることになります。
談合に参加する企業にとっては競争するよりもうまみがなければ談合に参加しようなんて企業はありませんからね。


この物語の中では、主人公は好むか好まざるかにかかわらず談合に巻き込まれることになります。同時並行で恋人との関係性が描かれており、2つのストーリーが楽しめる構成になっています。

土木工事で談合が絶えないのはある種の合理性があってのことです。そうでなければ誰が好き好んで法律を無視する談合をするでしょうか。この本を読めば、談合にかかわらなければならない人々の苦悩がわかることでしょう。